2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、多くの国・地域が、日本産の水産物を含む食品に対して輸入規制を導入しました。
これらの規制は、放射性物質による食品汚染への懸念に対応することを目的としています。国・地域によって異なりますが、漁獲水域や陸揚げ場所等により、次のいずれかの措置が適用されてきました。
産地等の証明が求められる場合、日本政府が輸出業者等から申請を受け、証明書を発行します。その申請に必要な情報を確認するため、漁業者、産地市場荷受・漁協などに対して、漁獲水域、漁獲日、陸揚げ場所等の情報や、それらを記載した販売証明書の提供が求められるようになりました。
この制度は、違法漁業の防止や漁業資源の管理を目的とするEUの漁獲証明制度などとは異なりますが、産地関係者が漁獲・陸揚げ情報の提供を求められる点では共通しています。
事故後には、55の国・地域が日本産食品の輸入規制を導入しました。その後、規制は段階的に撤廃・緩和されました。例えば、米国は2021年9月に、EUは2023年8月に、台湾は2025年11月に、原発事故に伴う輸入規制を撤廃しています。
2026年10月現在、原発事故等に伴う輸入規制が残っているのは韓国、中国、香港、マカオ、ロシアの5か国・地域です。
| 国・地域 | 水産物についての主な規制 |
|---|---|
| 韓国 | 指定された8県産の水産物を輸入停止。その他の地域についても、産地証明書または放射性物質検査証明書が求められます。 |
| 中国 | 指定された10都県の食品について輸入停止を継続。その他の地域の水産物については、産地や検査に関する証明書などの条件を満たした場合に輸出が可能です。 |
| 香港 | 指定された10都県に由来する水産物等を輸入停止。 |
| マカオ | 指定された10都県の水産物を含む食品について、輸入停止措置が残っています。 |
| ロシア | 日本産水産物の輸入を一時停止しています。 |
| 米国・EU・台湾など | 原発事故に伴う輸入規制は撤廃されています。 |
ここでは概要のみを示しています。対象となる都道府県、魚種・製品、必要な証明書などは国・地域によって異なり、変更されることもあります。最新の規制内容は、農林水産省の輸入規制に関する案内で確認しましょう。
原発事故後、輸出先国が産地等の証明を求めるようになったことに伴い、輸出業者や買受人から、産地市場荷受・漁協に対して販売証明書の発行が求められるようになりました。
販売証明書には、市場で販売した水産物の魚種、数量、漁船名、漁獲水域、漁獲期間、陸揚げ地などを記載することがあります。
輸入先国が求めるのは通常、日本政府が発行する証明書であり、産地市場が発行する販売証明書そのものではありません。
販売証明書は、政府による証明書の発給申請に必要な情報を裏付ける資料として利用されるものです。また、制度や申請方法によっては、販売証明書以外の記録や資料を活用できることもあります。
そのため、販売証明書の発行を依頼された場合には、どの制度への対応に必要なのか、どのような情報や資料が求められているのかを確認するとよいでしょう。
原発事故後、多くの国・地域が産地証明書や放射性物質検査証明書などを要求していた時期には、買受人が輸出先を問わず、産地市場から販売証明書を取得しておくことに合理性がありました。
産地市場から仕入れた時点では最終的な輸出先が決まっておらず、後日、輸出業者等から漁獲水域や漁獲日などの確認を求められることがあったためです。
しかし、その後、多くの国・地域が輸入規制を撤廃しました。現在は証明書を必要としない取引についても、従来の慣行によって販売証明書の発行依頼が続いている可能性があります。
販売証明書の作成には、産地市場の職員による記録の確認、証明内容の記入、押印や送付などの事務作業が必要です。件数が多ければ、相当な業務負担になります。
買受人、産地市場荷受・漁協、輸出業者等の関係者の間で、従来の取扱いを見直してみてはいかがでしょうか。例えば、次の点を確認することが考えられます。
市場による販売証明書の発行を一律にやめるべきということではありません。輸出先国の規制への対応に必要な場合や、取引上の合理的な理由がある場合には、引き続き情報の提供が必要になるでしょう。
大切なのは、現在も必要な対応と、過去の規制に対応するために始まった慣行とを区別することです。
また、証明書の発行を減らしても、漁獲水域や漁船などの基本情報を記録・保存することには意味があります。後から情報が必要になったときに対応できるよう、記録の保存やトレーサビリティの確保は継続するのがおすすめです。
なお、原発事故に伴う規制が撤廃された国・地域でも、EUの漁獲証明制度や米国SIMPなど、別の制度に基づいて漁獲・陸揚げ情報が求められる場合があります。それぞれの制度の要求を確認することが重要です。
規制の状況:2026年10月18日現在。輸出時には必ず最新の公式情報をご確認ください。
水産物トレーサビリティ協議会 Japanese Association of Seafood Traceability
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