日本では、食品表示法に基づく「食品表示基準」により、生鮮食品に該当する水産物について原産地の表示が義務づけられています。この義務は、スーパーなどの小売店で消費者に販売される商品だけでなく、産地市場荷受・漁協から買受人への販売など、事業者間の取引にも適用されます。
産地市場荷受・漁協は、販売する水産物の原産地を確認し、販売先に伝える必要があります。また、買受人や卸売業者も、次の取引先に適切な原産地情報を引き継ぐ必要があります。
食品表示基準において、原産地は品名とならび、生鮮食品に該当する水産物の基本的な表示事項の一つです。
食品表示基準第18条では、生鮮食品に該当する水産物の原産地について、次のように規定しています。
つまり、国産の天然漁獲の水産物については、「北海道産」「宮城県産」といった都道府県名ではなく、「北海道沖」「三陸沖」などの水域名の表示が原則です。水揚げ港が属する都道府県名による表示は、水域名の表示が困難な場合に認められる方法です。
一方、国産の養殖水産物については、主たる養殖場が属する都道府県名を表示することとされています。
また、食品表示基準では、冷凍しただけの魚介類も原則として生鮮食品に分類されます。したがって、生鮮魚だけでなく、単に冷凍した魚介類にも、この原産地表示のルールが適用されます。
なお、食品表示基準では、原産地のほか、名称(品名)の表示も義務づけられています。また、一般用生鮮食品に該当する水産物については、養殖されたものや解凍したものに、それぞれ「養殖」「解凍」の表示が必要です。詳しくは、消費者庁「食品表示基準Q&A」をご覧ください。
水産庁は2003年6月に「生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン」を公表しています。
このガイドラインは、水域名の表示方法について具体的な考え方や表示例を示したもので、産地市場で水域名を記録し、販売先に伝える際にも参考になります。
日本周辺の水域名について、ガイドラインでは次のような表示方法を例示しています。
| 水域名の種類 | 表示例 |
|---|---|
| 一般に知られている地名+沖など | 千葉県沖、銚子沖、北陸沖、山陰沖 |
| 個別の水域名 | 陸奥湾、富山湾、紀伊水道、玄界灘 |
| 漁獲統計海区に準じた水域名 | 日本太平洋北部、日本太平洋中部、日本海北部、東シナ海 |
広い漁場を移動して操業する漁船については、漁獲の実態に即した水域名の使用方法も示されています。
水産庁のガイドライン
東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故後、東日本太平洋側で漁獲された水産物について、より詳しい漁獲水域の情報が求められるようになりました。
これに対応して、水産庁は2011年10月に「東日本太平洋における生産水域名の表示方法について」を示しました。
この方法では、東日本太平洋の海域を区分し、その区分に沿って漁獲水域を表示することができます。例えば「三陸北部沖」などの水域名が使用されています。
産地市場荷受・漁協が水産物を買受人に販売する場合にも、食品表示基準に基づく原産地表示が必要です。
消費者向けの商品では容器包装や商品に近接した掲示などによって表示しますが、事業者間で取引される生鮮食品については、食品表示基準第22条により、送り状や納品書等の書類に表示することも認められています。
産地市場では、例えば次のような方法が考えられます。
原産地情報(漁獲水域)が記載された伝票や販売証明書は、原産地表示義務を果たす手段となるだけでなく、買受人にとって、次の事業者に原産地情報を伝える根拠となります。
沿岸漁業では、漁船ごとに操業する水域が限られており、漁業者に聞くまでもなく漁獲水域を特定できる場合がほとんどでしょう。
一方、サンマ漁業、カツオ・マグロ漁業などでは、漁船が広い海域を移動して操業します。このような場合には、産地市場荷受・漁協が漁業者や漁船関係者から漁獲水域を確認し、記録しておくことが重要です。
産地市場が把握した水域情報は、その後の買受人、卸売業者、小売業者へと引き継がれ、最終的に消費者向け商品の原産地表示に利用されます。
水産物トレーサビリティ協議会 Japanese Association of Seafood Traceability
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